リノベーションをする上で知っておきたい施工事例の読み取り方

老朽化した自宅の再生や住宅性能の向上を図る自宅の改修において、近年は住宅リフォームに加え「住宅リノベーション」をする人も増えています。リノベーションを計画する上で欠かせない情報が、リフォーム工事会社やリフォーム専門雑誌等に掲載されている「施工事例」です。施工事例からは有益な情報を多数得ることができます。

本記事では事例を読み取る上で知っておきたいリノベーションの基礎知識をご紹介した上で、施工事例を読み取るポイントをご紹介します。

目次

リノベーションをする上で知っておきたい施工事例の読み取り方
住宅のリノベーションとは?
住宅のリフォームとの違い
リノベーションのメリット
(1)住宅をライフスタイルに合わせ自由に変更できる
(2)比較的低予算で好立地に住める
(3)資産に価値を付与できる
(4)新築物件を買うより割安になりやすい
リノベーションのデメリット
(1)施工期間が長くなりやすい
(2)物件によっては工事費が高くなることも
リノベーション施工事例から読み取ることは?
まとめ

 

住宅のリノベーションとは?

住宅リノベーションとは、間取り、内装・外装、住宅設備、配管・配線など居住要素のすべてをゼロベースで見直し、既存住宅を大規模に改修することです。これにより住宅性能を高め、既存住宅の価値を高めることができます。

換言すれば、自分たちの暮らしやすさに合わせた大規模な改修がリノベーションとも言えます。

住宅のリフォームとの違い

では住宅リノベーションと住宅リフォームの違いは何でしょうか。

これについては明確な線引きがなく、法的な定義もありません。このため住宅リフォーム工事会社、ハウスメーカー、メディアなどがそれぞれの立場で解釈し、用語を使い分けているのが実情と言えます。

ただ参考までに紹介すると、関連会社が組織している「リノベーション協議会」は、「リノベーションとは中古住宅を機能・価値の再生のために改修し、その家での暮し全体に対処した包括的な改修を行うこと」と定義しています。そして2つの違いについて、

  • リノベーション……機能、価値の再生のための改修であり、その家での暮らし全体に対処した包括的な改修
  • リフォーム……原状回復のための修繕、営繕など不具合箇所に対処した部分的な補修

との考えを示しています。

リノベーションのメリット

メリットとして、基本的に次のような点が挙げられます。

(1)住宅をライフスタイルに合わせ自由に変更できる

リノベーションは「ライフスタイルやライフステージに合わせるための住宅再生」が目的なので、間取り変更、断熱化、動線変更、採光・採風などの住宅性能をゼロベースから変更できます。

(2)比較的低予算で好立地に住める

自分たちが希望する立地で、希望通りの新築物件を予算内で購入するのは困難です。特に駅近や「住みたい街」にランキングされている人気エリアなどの好立地では、用地取得が困難なため新築物件が供給されるのは皆無に近い状況です。稀にあっても超高額物件になっています。対して中古物件は好立地でも物件数は豊富です。したがった「中古住宅購入+リノベーション」なら、好立地で自分たちのライフスタイルやライフステージに合わせた住宅を予算内で確保できる可能性があります。

(3)資産に価値を付与できる

新築物件や築浅物件は購入直後から資産価値(建物価格)が年々下落し、およそ築20年で建物価格が土地価格に近付き、資産価値がほぼゼロになります。新築物件や築浅物件はそれだけ住宅としての資産価値が低いと言えます。

対して築20年以上の中古物件は資産価値がほとんどありませんが、リノベーションを施すことで建物が新築物件とほぼ同等になり、資産価値が生まれます。

また戸建て分譲住宅や分譲マンションは、オプション等の選択肢はあっても本質的に「既製住宅の購入」になります。対してリノベーションは建物の構造体(骨組み)を残して住宅のすべての構成部分を解体し、ゼロベースから再建築することになるので、施主の希望を可能な限り盛り込んだオーダーメードの注文住宅と近い住宅に仕上がりが期待できます。

(4)新築物件を買うより割安になりやすい

築年数や地域により異なりますが、一般に中古物件は新築物件の半値程度で購入できます。したがって「中古住宅購入+リノベーション」なら、工事費を上乗せしても新築物件購入より割安になるケースが多いと言われています。また老朽化した住宅を建て替える場合よりも、リノベーションをする方が工事費は全般的に安くなる傾向にあります。

戸建て住宅の建替え工事費は全国平均で約3400万円が相場と言われています。また国土交通省が2021年4月に発表した『令和2年度住宅市場動向調査結果』による三大都市圏の分譲戸建て住宅の平均購入価格は3826万円、分譲マンションは同4639万円などとなっています。対して一般的なリノベーション工事費は1000万円前後が相場と言われています。建替えや新築住宅購入に比べ、工事費は30%程度で済む計算になります。

リノベーションのデメリット

もちろんデメリットも存在します。ここでは主なものを紹介します。

(1)施工期間が長くなりやすい

建物を躯体だけの状態(スケルトン)に戻してから工事をしなければならないので、床・天井・柱・梁・壁の解体を始め工事は大規模になります。したがって工期は通常3~6カ月と言われており、一般的なリフォームよりも期間が必要になりやすいです。

(2)物件によっては工事費が高くなることも

1981年6月以前の旧耐震基準で建築された中古物件は、耐震性が低いのでリノベーションする場合は躯体の大幅な耐震補強が必要になります。このため住宅購入費は安くても工事費が通常より高額になる可能性があります。費用を抑えるためには、物件選びも重要です。

リノベーション施工事例から読み取ることは?

施工事例にはビフォー・アフターや工事中の写真が豊富に掲載されているので、施工後の自宅の具体像をイメージしやすいと思われます。また施工内訳、工事費、工期などを記載している事例も多いので、施工会社の実績や施工力を推測する判断材料にもなるでしょう。

さらに様々な会社の施工事例を梯子して見てゆけば、自然と見るべき箇所の勘所も身に着くでしょう。そうしてこれはと注目した事例や気になる事例は、その施工会社に詳しい資料請求をすると良いでしょう。施工力に自信のある会社は、施工中の現場見学会を開催しているケースもあるので、それに参加することで知見も深まるでしょう。

このように事例は、自宅の施工計画において極めて有効な情報源と言えます。ただしその情報を鵜呑みにするのは、賢明な施主が取るべき態度ではないと言えます。

と言うのは、

  • 事例で紹介されていた住宅設備が気に入ったので、同一製品を注文したら事例に記載されていた購入額より15%高かった→住宅設備の調達価格は施工会社により異なるので、同一製品でも依頼する会社により施主の購入額は変わる
  • 事例で紹介されていた施工が気に入ったので、それと同一の工事を依頼したら、見積が事例に記載されていた工事費より20%高かった→用途地域等建物の立地、建物解体や施工の難易度など施工条件により工事費と工期は異なる
  • 竣工検査をしたら雑誌に載っていた写真通りの出来栄えではなかった→特に雑誌に紹介されている「リノベアフター写真」の場合は、プロのカメラマンが撮影しているので撮影用の照明・小物配置による演出、画像処理などで高級感あふれる快適居住空間になっている

などのケースが実際にあるからです。施工事例は、あくまでも自身の計画の参考情報にしか過ぎません。

住宅リノベーションにおいて何よりも重要なことは、まず自分たちの自宅改修目的とイメージを明確化した上で、

  • 工事会社の強みと特徴が自分たちの目的・イメージとマッチしている
  • リノベーションの施工実績が豊富で多種多様な施工ノウハウを持っている
  • 自分たちの計画に対して適切なアドバイスをしてくれる
  • アフターフォロー体制が充実している

などの要件を備えた住宅リフォーム工事専門会社を選ぶことと言えるでしょう。これはすなわち施工事例を読み取る上でのポイントでもあります。

関連ページ:リフォーム・リノベーションの施工事例

まとめ

リフォームと同じく、リノベーションも自分たちのパートナーとなり、強固な信頼関係を築ける優良なリフォーム工事専門会社をいかにして見つけるかが、成功のカギになるでしょう。

そして施工事例には、それを見分けるヒントが詰まっています。様々な事例を見比べることで、それを見分ける目が養われていくのではないでしょうか。

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